突然ですが、あなたは、顧客との商談の中で、価格が「高い」「予算がない」などと言われた場合、どのように対応をしていますか?
・値付けが相応であることを説明する
・お客様の持っている予算を確認し、予算にあったものを提供する
・お客様の背景や課題を聞き、最も適切に課題解決ができるであろうものを、予算に関係なく提案する
・他社商品と比較して妥当性を訴える
・なぜ高いと感じるのか、理由を確認する
・高いと言ってくるようなお客には売らない(!)
・・・などなど、様々な対応が考えられると思います。通常、価格の話が顧客から出た場合は、上記のような対応策を、その時の状況に応じて組み合わせていくのが定石ではあるのですが、こういった、価格の話に代表される「お客様のネガティブな反応に対峙した時」というのは、営業パーソンの価値観がもっとも色濃く行動に反映される瞬間でもあります。
結論を先に言ってしまうと、お客様中心の思考になっていれば、行動は自ずと、「お客様にとって良い状態」を作り出すための本質的な提案になります。
逆に、自分中心思考になっていると、自分が簡単に早く契約をとるための場渡り的なものになったり、お客様の言いなりの御用聞きになりがちになります。
今回はそんな、「営業の目的」と「営業スタイル」について、お伝えしていきます。
先日、ある企業で法人営業マンのAクンと新規の営業同行をする場面がありました。(実際の状況とは少し内容を変えて記載します)
私:「今日のアポは、どのような経緯で取れたのかな?ゴールはどのようにイメージしている?」
Aクン:「アポをとる際の電話で、’’価格が50万円までで収まるなら、話を聞くよ ’’と言われたので、合う商品があります、とお伝えしてアポをとりました。
なので、今日は50万円で収まる商品の資料を持ってきました。この説明をして納得いただけなければ難しいと思います。ゴールとしては、できれば契約をしたいと思いますが、行って話してみないとなんとも言えません。納得してもらえずあっさり終わってしまうかもしれません。」
私:「なるほど、、、先方は予算を気にしているんだね。ところで、商品の内容や価値については、どのくらい話ができているの?確か100万円の商品もあるよね。その資料は持ってきた?」
Aクン:「商品の内容については、ほとんどまだ話せていません。とにかく価格、という感じだったので。100万円の商品の資料も、必要ないと思って持ってきませんでした。」
私:「そっかぁ。わかったよ。ところでAクンさ、もう一度聞くけど、良い悪いじゃなくて、純粋に聞きたいのだけど、Aクンのこの商談のゴールは何?」
Aクン:「もちろん、契約をとることです。ですから、50万円の商品を、なんとか売りたいと思います。」
いかがでしょうか。あなたはこのやりとりを見て、どう思われましたか?
私は、残念ながらAクンは、お客様のことよりも、自分の契約(営業成績)を優先する状態に陥ってしまっていると感じました。
こういう状態になると、早く契約を取ることが優先になり、相手の表面的な言葉に合わせて御用聞きになりがちになります。
仮に契約をいただけたとしても、お客様と対等で、継続的に良い関係を築いていくような関係は作りにくいことが予測されます。
Aクンは、「契約をとる」という目的を持っているわけですから、お客様に50万円以下の商品が欲しいと言われれば、当然、それに合致した価格の商品を案内して契約してもらうという行動になります。
お客様がなぜそう言ったのかの背景や、そもそもその商品に興味を持った価格以外の理由がどこにあるのか、その商品を購入したその先に、何を期待しているのかなど、そういったことは、眼中になくなってしまっています。
しかし、目的が「自社の商品を通じてお客様の問題を解決し、お客様のビジネスがうまく行くことをお手伝いする(そしてそれによって自分が幸せを感じる)」という目的であったら、どうでしょうか。
たとえ相手が50万円しか予算がないと言ったとしても、その背景や理由、今抱えている問題などをじっくりと聞いた上で、お客様のビジネスがうまくいくための最も良いと思われる案をご案内する、という行動に、アクションが変わるのではないでしょうか。
「最も良いと思われる案」が、たとえお客様が言う予算をオーバーしていたとしても、予算に合ったものと、2パターン提案すれば良いはずです。
どんなに安くても、価値のない商品を、人は買わない
営業は「モノやサービスを売る仕事」である前に、「モノやサービスを売ることを通じて、お客様に貢献する仕事」です。そもそも経済の原理原則として、役に立たないもの、その人にとって価値のないものは売れない。たとえ無料であっても売れません。
営業のセオリーで言えば、かの有名なブライアントレーシー氏も、「価値の話をしないうちに価格の話をするのは無意味」と言っています。冒頭の質問の答えを、テクニック論で論じれば、
「顧客の背景を理解した上で、顧客が最も興味を示すポイントに絡めて商品の価値を訴え、その後、最後に価格を提示する。その際は、値付けの根拠を示しながら提示する」
というのが答えになるわけなのですが、それは突き詰めていくと、こういった顧客心理やビジネスの原理原則に沿った意味があるからなのです。
人は、価値を感じるものにはお金を出します。価値を理解していない状態での「予算」というのは、実態のないものです。このことは、本質的には企業であっても同じです。だからこそ、価値を十分に感じてもらえる話をしていないのに、価格だけで話をつけてしまうことは、無意味なのです。もっと言えば、価値を理解せずにものを購入するお客様は、不幸だとも言えるでしょう。
昨今では、成功報酬型の広告や人材紹介など、「成約するまではいくら使っても無料」というサービスも増えており、必然的に、営業スタイルも、「無料のサービスです」という触れ込みでテレアポや新規営業をする場面が多々見受けられます。
もちろん、話の中で「無料」という言葉を使うことが、有効なシーンはあるかもしれません。
しかし、「人がものを買う本質」を考えれば、いくら無料であっても、反響が来ない広告は出す意味がないわけですし、いくら無料であっても、採用できない人材紹介は、顧客にとっては使う意味がないはずです。
その本質をわかった上で無料という話をしているかどうかという点を見ていくと、その営業パーソンのあり方が見えてきます。顧客のことよりも自分の営業成績のことが気になっていて、ただアポイントが取れればいい、という目的で話をしているのか、きちんと顧客と向き合う気持ちを持っていて、入り口のきっかけとして無料という話をしているのか。
その人が何を目的に仕事をしているのかというあり方は、どんな時でも、仕草や言葉などの言動で、見えるものです。
あなたは、なんのために営業をしていますか?
自分の契約数のためですか?
それとも、お客様への貢献を通じて得られる、自分の幸せのためですか?
数字に追われがちになる仕事であるからこそ、私も常に、問うていきたいなぁと、思っています。
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