なぜ、強い営業部は、上司が部下に「必ずできる!」と言うのか? – ①「性善説マネジメント」-

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前回、前々回の「強い営業部の目標設定」に関連して、今回は、強い営業部に共通する

「性善説マネジメント」

と「採用への信頼」について、お伝えして参ります。今回は、まず、「性善説マネジメント」についてです。

 

マネジメントスタイルには、その会社の価値観が反映されることが多いように思います。

特に、強い営業部と弱い営業部のマネジメントの違を考えた時、強い営業部のマネジメントは、殆どが「性善説」に立っており、弱い営業部のマネジメントは「性悪説」に立っている。

これは、私の経験上では、かなりの企業ー少なくとも私が知る企業では90%以上ーが、そうであると感じています。

 

例えば、営業の生産性を考える際に欠かせない、営業の行動管理の場合、強い営業部のマネジメントは、性善説に立っていますので、営業パーソンの日々の行動をこと細かに毎日チェックするようなことはしません。

逆に、弱い営業部のマネジメントは、生悪性に立っているため、営業パーソンの日々の行動を、かなり細かいレベルまでチェックしていることが多いです。

例えば、いつどの会社に、どのくらいの時間訪問し、そこで誰に会ってどんな話をしたのか・・・を、毎日チェックする、というような感じです。酷い場合は、何時に訪問したのか、どんなトークで相手と話したのか、どんな資料を持って行ったのか、までチェックします。

 

 

もちろん、営業パーソンの年次や、スキルのレベルによって、細かく指導しなければならないケースがあることは当然ですし、業種業態によって、必ずしも性善説だけで運用することが難しいようなケースがあることは当然です。

しかし、ここで抑えて頂きたいポイントは「スタンス」です。

 

強い営業部のマネジメントは、一人一人の営業パーソンを「信頼できる人間である」「(現時点での到達点はともかくとして)必ず出来る、素養のある人間である」「仲間である」「ズルをしたり逃げたりする人間ではない(ちゃんとやるべきことをやる人間である)」

・・・という前提に立って、行動管理や日々の指導を行っています。

しかし、弱い営業部のマネジメントは、一人一人の営業パーソンを、「信頼できない人間である」「ちゃんと指導しないと、出来るようにならない人間である」「監視しなければならない従業員である」「目が届かないところでは手を抜いたり、ズルをしたり逃げる人間である」

・・・という前提に立って、行動管理や日々の指導を行なっているのです。

 

当然、上司が部下にかける言葉のニュアンスも、違ってきます。会議での確認の仕方も全く違ってきます。

そしてその積み重ねによって、部下が日々の営業活動でフォーカスする部分も、大きく変わってしまうのです。

 

本来、営業パーソンがフォーカスしなければならないのは、「契約を頂くために何をすべきか」と、「顧客満足の最大化のために何をすべきか」であるわけですが、

弱い営業部の営業パーソンは、「いかに上司に怒られないように報告するか」「いかに自分は手を抜かずに働いているということを証明するか」に、フォーカスすることになってしまいます。

 

当然、顧客ではなく上司を見ている営業は、売れません。

 

誰よりも上司がまず、「彼(彼女)なら必ずできるはず」と信じているか

性善説 マネジメント

また、性善説と性悪説のマネジメントの違いは、目標設定においても顕著に現れます。

「強い営業部の目標設定」の回でも述べましたが、強い営業部では、全員が、いまのままでは達成できないが少し背伸びをすれば達成できる「ストレッチ目標」を、全員合意の上で設定します。

しかし、弱い営業部のマネジメントは、性悪説に立ち営業パーソンの能力を見限ってしまっているために、高い目標を課すことを、上司が怖がってしまっていることが多いです。

 

「高い目標を課しても、どうせ無理だろう」「下手をしたら辞めてしまうかもしれない」と、誰よりも上司自身が、そう思ってしまっています

上司が「達成できない」と思ってしまっている気持ちは、部下にも伝播しますので、当然、部下は「できない」状態になります。

どうせおまえはこのくらいしかできないから、このくらいの目標にしておけ、と、低い目標をもたせ続けられることによって、部下がどんどん自分の能力を低く見積もり、自信を無くし、結果、本当にできない人になってしまうというケースは、決して少なくありません。

 

ーーー例えば、まだ赤ちゃんの自分の子供が、一生懸命歩こうとしていたとして、なかなか立ち上がれない、歩くことができない、そんな時に、「おまえは歩く能力がないようだから、歩くのはやておこう」と言う親がいるのか。そんな親はいないはず。何度も一緒にチャレンジして、もう一回やってみよう、もっと足をこうして、と一緒に歩けるようになるまで、やり続けるのではないか。マネジメントも同じ。部下の能力を信じ、「必ず出来る」と勇気付け、とことん付き合うことが重要であるーーー

これは、以前福島正伸先生の講演で聞いた話ですが、心から共感しました。私もその通りだと思います。

 

「必ず出来るから、思う通りにやってごらん」この一言で、ビリ営業がトップ営業になることも

こんな事例もあります。

私が以前クライアント先で指導させて頂いた女性営業で、中途入社してから半年間、1契約もあげられずにいた社員の方がいましたが、その方は、私と個別面談でたったの2時間、話をしただけで、翌日から契約が取れるようになりました。

その方は、入社2ヶ月ほど経ったタイミングで契約があげられなかったことから、それから4ヶ月間の間、連日のように上司とマンツーマンでロープレを行い、こと細かに立ち振る舞いやトークを指導されていました。言葉尻から笑顔の作り方に至るまでこと細かに指導されていました。

私と初めて会った日、彼女はとてもびくびくしていて、自信がなく、自分を卑下しているように見えました。

それも当然と言えば当然です。「おまえは誰がどう指導してもダメだから、外部の方に指導をお願いした」と言われていたわけですので・・・

 

面談開始から約2時間、彼女の生い立ちや、中途でこの会社に入る前の職歴、将来の夢、これまで最も嬉しかった仕事、辛かった仕事、仕事で大切にしていること・・・など、一通りを聞き、簡単なロープレをしたあと、私が彼女に伝えたことは、たったひとつ、

「あなたなら必ず出来るから、思う通りにやってごらん。のびのびと。」

ということでした。

 

もちろん、いろいろと話を聞いた上で、彼女の判断軸は信頼できる、と感じたからこそかけた言葉ではあります。しかし、たったこれだけのことで、彼女は翌日から、契約が取れるようになり、なんとその月は、部内でトップの成績をあげることになったのです。

このように、人の能力は、本人が自分をどのように認識するかによって大きく変わってしまいます。

「私はできない人」と認識するか、「私は出来る人」と認識するか、たったこれだけのことで、結果が天と地ほど変わってしまうのです。

 

これに近しい内容として、組織行動学の分野では、「x理論 Y理論」(マクレガー)という理論もあります。(参考:http://gms.globis.co.jp/dic/00150.php)これについてはまた別の機会に詳細をお伝えして参ります。

 

 

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いかがでしたでしょうか。貴社のマネジメントは「性善説」に立っていますか?「性悪説」に立っていますか・・・?

ぜひ、部下の中にある「素晴らしい点」「本来できるはずの可能性」を見逃さずにまっすぐに見て、マネジメントを行なってみてください。

必ず、みるみるうちに業績が向上することになるかと思います。

次回は、「性善説マネジメント」と「採用への信頼」の関係についてお伝えいたします。どうぞお楽しみに!

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●本コラムの関連テーマとして、「強い営業部の目標設定」について書いております。

強い営業部と弱い営業部の「目標設定」の違いとは?① -目指す世界観の明確化と売上の意味づけ

強い営業部と弱い営業部の「目標設定」の違いとは?② -「ストレッチ目標」と「目標の合意」-

こちらもぜひ、ご覧ください。

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