今回は、前回に引き続き、「営業部の目標設定において絶対に外してはならないポイント」を、お伝えして参ります。
今回は、「ストレッチ目標」と「目標の合意」についてです。
(①の「目指す世界観と営業の存在意義の明確化」についてはこちらから是非ご覧ください)
個人目標は、「ストレッチ目標」を「合意の上で」決めることが必須
営業パーソンにとって、目標を達成するということは、仕事をする上での大きな喜びの一つです。目標達成は、自分の頑張りや成長の確かな印であり、誇りでもあり、明日への活力でもあります。
だからこそ、個人の数値目標は、簡単に達成できるようなものではなく、今のままでは難しいが頑張れば達成できる、というくらいの「ストレッチ目標」であることが必須です。
また、会社と自分、そして仲間と自分が「合意した目標」であることーつまり、営業パーソン自身が、自らその数字をコミットメントするというプロセスを踏むことー が必要不可欠です。
●「ストレッチ目標」
ある心理学の実験では、手を抜いてやった仕事を褒められることは、却って自尊心を低下させる、ということがわかっているそうですが、営業の個人目標も似たような側面があると私は思っています。
簡単に達成できる目標や、少し手を抜いても達成できてしまうような目標は、いくら達成し続けても、営業パーソンの自信は育ちません。
それどころか、簡単な目標を達成し続けた結果、「自分はこの会社でしか通用しない人間なのではないか」と、かえって自信をなくし、チャレンジできなくなったり、仕事を楽しめなくなってしまうケースは珍しくないのです。
私は、大手企業からベンチャーまで、様々な営業部のみなさんとお目にかかりますが、このように自信喪失状態に陥ってしまっている営業パーソンは、とても多いように思います。
逆に、自らストレッチ目標を設定させ、必ずできると信じて営業活動をサポートすることによって、みるみるうちに生気を取り戻し、見違えるように成長していくことも、稀なことではありません。
目標設定のしかたを変え、サポートする、たったこれだけを変えただけで、半年以上業績不振だった営業パーソンが部内トップになった、という例もあるほどです。
そのくらい、目標設定のしかたは、営業パーソンの力を最大化する上で重要なポイントとなります。
チャレンジできない、仕事を楽しめない営業は、自分の魅力や持っている力を最大限に発揮することができません。
いつもどこか自信無さげで、ビクビクしているような雰囲気を醸し出していますから、当然、業績も上がりません。
これに対して、ストレッチ目標を設定し、常に背伸びしながら目標達成をし続ける営業は、「大変だけど楽しい」「大変だからこそ得るものも大きい」という価値観を身につけ、どんどん自らの可能性を切り開き、自信をつけて成長していきます。
常に生き生きと仕事をしていますから、誰から見ても魅力的であり、仕事が好き、製品が好き、お客様が好き、と思っていますから、新規開拓やプレゼンにも熱がこもり、当然、業績も上がっていきます。
●目標の合意
また、クライアントのお悩みで多いものとして、
「営業マンから、目標達成に対するハングリーさを感じない。どうしたらハングリーに数字に向かっていくようになるのか」
「いつも『達成できませんでした』と言うばかりで、『次こそは達成してやる』というような気迫が感じられない。どうしたら必死で仕事に向かう営業部を創れるのか」
・・・というものがありますが、こういった場合、目標設定のしかたを伺うと、「目標数字に対する合意がない」、つまり、
営業パーソンが自ら、「この数字をやります」とコミットメントすることがないまま、営業活動がスタートしていることが殆どです。
前回の①「目指す世界観と営業の存在意義の明確化」でも少し触れましたが、強い会社の営業部では決して、「経営から降りてきた数字」を「会社のためだけに追う」ということをしません。
もちろん、会社ですから、経営サイドが経営目標を決め、そこからブレークダウンして営業部の数値目標が決まる、ということではありますが、強い会社の営業部では、その数字をきちんと営業一人一人が、自分ごととして検討し、やります、と全員の前でコミットメントするプロセスを踏みます。
具体的には、(やりかたはいろいろありますが、例えば)会議の場で全員がストレッチ目標を自己申告し、経営から降りてきた数字とそれをすり合わせ、足りない分を相談して決めていく、というようなやり方です。
ストレッチ目標は「マーケット拡大」に寄与し、合意のプロセスは、「やりきる力」を生み出す
各自の自己申告数字については、営業同士で、客観的に見て適切なストレッチ目標になっているかどうかをチェックし合ったり、
時には厳しく「チャレンジしてないんじゃないの?」などと突っ込んだりすることもとても大切なことです。
このプロセスを踏まない場合、例えば、経営から降りてきた数字を営業の人数で頭割りし、有無を言わさずにこれが今期の目標です、と割り振られるとか、自己申告の数字が本当にその人の成長のためになるか確認しないまま決めてしまったりすると、
目標数字が「自分ごと」として腹におちないまま、そして、組織に自分の役割をコミットメントしないままスタートすることになるため、最後まで頑張りきれずに結果がついてこなかったり、達成できなくても人ごとのような、責任感のない状態に繋がってしまいます。
また、(これはまた別の機会に詳しく書こうと思いますが)営業一人一人がストレッチ目標を掲げる=ひとりひとりが背伸びをしなければ達成できない数字を持つ、ということは、つまり、
「営業一人一人の活動が、マーケットを拡大し続けることに寄与している」ことにも繋がります。しかし、この部分を意識している会社は殆どないように思います。
この部分が営業パーソンの腹に落ちていないと、営業数字が横ばいまたは縮小し続け、結果、マーケットが縮小してしまう、ということにも繋がってしまいます。
自ら設定した目標を、会社の売上という意味以上に、マーケットを拡大するという視点で仲間にもチェック・検討してもらい、全員合意の上で目標設定をすると、そのプロセスを経るうちに、自然と責任感が生まれ、全員で必ず達成しよう、という雰囲気が出来上がります。
その上で営業活動を開始すれば、自ずと、「達成しないことはありえない」「自分がストレッチすることでマーケットも拡大し、顧客にも貢献できる」という意識が生まれ、ギリギリのところであと一歩を踏み出すことができたり、仲間同士で助け合うことができるようになるのです。
貴社の営業部は、いかがでしょうか?
貴社の営業部では、全員がストレッチ目標を、自らコミットメントして目標設定をしていますか?
全員で目標設定を実施し、マーケット拡大のために、営業活動をしていますか?
仲間の前でコミットメントした数字を、プライドをかけて追いかけることが、清々しい良い仕事だという価値観を、創るしくみがありますか・・・?
是非一度、確認してみていただけたらと思います。
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